ヤブヌマ 侵食されゆく妻の蜜肌

『ひっ、あっ、あっ、あぁんっ、や、やめっぇぇっ』

やめて、の一言が紡げぬほどに喘がされ、代わりに首をイヤイヤと振って見せた、咲美。儚い抵抗を諦めていないのが伝わるたびに、夫の胸を切なさが突き抜ける。

『セックスっ、してるよぉぉぉっ』

ひと際大声で、勝利宣言のごとく発せられた藪沼の発言が、スウェット奥の男根に強かに轟く。発狂寸前の、胸を掻き毟られるような嫉妬心の中。気がつくとスウェットは下ろされ、いきり立った自らのペニスが手中に収まっていた。

「っふ、くぅぁっ……」

わずかに腰を動かしただけで、痛切な痺れが、玉袋から肉竿の突端にまで駆け上がる。少し擦っただけでも、射精しかねないと直感した。

(奴が咲美を味わってる、それを見つめながら、僕はッッ、~~~!!)

劣等感に苛まれながら、せめて漏らさぬようにと肉棒をきつく、きつく握る。

そうして、股間に迸る苛烈な痺れに蕩かされた眼で、画面を凝視し続ける。

ほどなく映像がまた切り替わった。カメラは、後背位で繋がっている二人を真横、左側面から捉えている。

『ほら、声っ、まだ我慢してるっ』

言いながら藪沼が腰を振るう。

奴の肥えた腹肉と、咲美のむっちり肉の詰まった尻とがぶつかって、パンパンと小気味のよい音を響かせていた。

『はぁっ、はっ、あぁ……っ、ふぐっ、むぅっ、んむぅうぅっ』

頤を反らせた咲美の唇は、血がにじみそうなほどに食い縛られている。藪沼の言通りに、嬌声を噛み殺しているのだ。

「咲美っ……」

耐えてくれ、と願う気持ちを、瞬時に欲望が呑みこんでしまった。

──早く、もっと蕩けた鳴き声を聞かせてくれ。

剥き身の男根が期待に脈打ち、己が手中にべっとり、先走りのツユを吐きつける。

『我慢、しないっ』

吠えた藪沼の腰が回転速度を上げた。

『あっ、ひぃ、いぃぃんんッ!』

尻肉がたわむほどの痛烈な一撃を連発で見舞われて、咲美が叫びとも、喘ぎともつかぬ金切り声を吐き漏らす。

『そう! 全部、忘れてっ! 思いっきり!』

藪沼の動きに変化があった。深く肉棒を突き刺すのと同時に、腰を八の字に回している。ああやって、蜜壺に己の存在、形状を刻みつけているのだ。

溢れた蜜で濡れ光る肉幹を、誇らしげに誇示しながら、歓喜の只中にいる藪沼。

(それに比べて僕は……ッッ)

状況の格差に嘆くべき状況で、尽きることなき嫉妬が肉竿に宿る。終わりの見えない嘆きが焦燥伴う熾烈な痺れとなってペニスの根元から突端にまで駆け巡った。

『エッチになっちゃいなっ、アサオカちゃんっ』

『やぁ、んっ! んひぃっ、やっ、ぁ、だめっ、だめぇぇっ』

イヤイヤと首を振った咲美の髪がそよぐ。その匂いを堪能せんがため、藪沼が上体を傾け、咲美の背に被さった。

『そうそうそう、すごい、すごい締まる締まってるよっ、アサオカちゃんっ! 口よりもお股の方が素直だねッ』

奴の意地汚い肉竿を、咲美が締めつけている。よだれ代わりに蜜をボトボトこぼしながら、頬張るように、より奥へといざなうように。

『あぁぁっ、はっ、あぁっ、んっあああっ!』

すでに、開き通しとなった口腔からはひっきりなしに嬌声が生成、放出されている。唾を絡めた彼女の舌先までもが顔を覗かせて、喜々として震えるさまを見せつける。

『ひょっとして……もうイキそうだったり?』

いやらしい尋ね方をする下種男に対し、咲美は無言で、恥悦にまみれた顔を小さく縦に俯かせた。首肯したのだ。

(それくらい僕にだってわかるっ。だから、勝ち誇るな……藪沼ァッ!)

汁濡れたゴムに覆われている逸物を食い締める膣唇が、小刻みな震えを発している。悶えうねる彼女の腰つきは、夫が幾度となく蜜事の中で目にしたものと同じ。

(ああ……もうすぐ)

終わる。終わってしまう。夫と同じ想いを抱いたであろう画面の中の咲美が、潤む瞳を背後の男に振り向けた。その視線に宿っているのは、期待。

(もうすぐ終われることを期待しているんだ。そう……だろ?)

──もっと、欲しいってせがんでいるのさ。

反する二つの推測のどちらが正しいのか。答えは、藪沼の次の一手が導き出した。

『まぁだ、だめだよ』

いやらしい笑みを湛えた奴の唇が、間近の咲美の耳朶に、そう囁く。次いで、これまでの激しさが嘘のようにぴたりと腰を停止させて、相手の表情を窺う。

『……っ!?』

顔を背けるのも忘れて、咲美が一瞬、困惑を表情に浮かべた。

それを確かめたうえで、満足の笑みと頷きをし、藪沼の腰がゆるりと回りだす。捻るような動き、より小さな円回転で、膣の奥深いところを穿り始めた。

『んッ……ふ、ぅ……っ、ンン……ンンっ……やぁ……ぁはぁっンンゥッ』

受け止める咲美は、もどかしさと恍惚のはざまを行き来するように、頻繁に表情を変える。今にもくずおれそうなほど震えていた手足を突っ張らせているのも、瞼を下ろして視覚を遮断しているのも。膣奥に轟くじれったい衝撃を、少しでも強く体感したいがためではないのか。

(咲美が……藪沼の与える刺激を、藪沼のペニスを、欲しがってる……)

どんなに嫌っていても、夫を愛していても、肉体の求めに抗えない。一度繋がってしまうと、これほどに脆いものなのか。

『ほら、じゃあ自分で動いてごらん』