ヤブヌマ 侵食されゆく妻の蜜肌

藪沼に背を抱かれたまま、湯船の中へと導かれた咲美が、立ったままで尻に肉棒を摺りつけられている。ご丁寧にカメラに正面を向かされた格好で、今まさに他人棒を挿入されようとしていた。刺激に耐えきれず悶えながら、諦めと期待。相反する二つの感情を表情に浮かべた愛妻は、抵抗も見せずにただその瞬間を待っている。

(……昨日までは。いや、今日このDVDを観るまでは)

前回のDVDに収められたものがすべてだと、思っていた。藪沼は編集したと言っていたが、それはあくまでいらぬ部分を切り落とし、繋いだだけなのだと、前回の最後に収められていた三度目の性交で、終わったのだと思っていた。わずか二十分ほどで、四度目があったなどとは、思いもしなかった。

──まったく想像しなかったわけじゃないだろ?

もう一人の自分が、囁きかけてくる。

──咲美の新たな痴態を拝める日が来ないものかと、思っていただろう?

「……ッッ!! やめ、ろっ……やめろっ!」

内なる己の欲望と、画面に映る藪沼、双方に向けて叫ぶ。風邪による掠れ声はあまりに弱々しい。それがそのまま己の理性の脆さであるように思えてしまった、その結果。理性と欲望とのせめぎ合いは、後者の勝利に終わった。

心の主導権を握った欲望が、瞬く間に増大する。

(ああ、今日も、また……)

理性が勝ったことなど、一度としてありはしない。だがせめぎ合いそのものが、歪な恍惚のこの上なきエッセンスとなるのだ。理解しているからこそ、毎度飽くことなく通過儀礼と化している。

さらに今は、新たなDVDという新要素が昂揚の上塗りをしてくれてもいた。新鮮な怒りと嫉妬が、制止を請うほどに煮沸する。久方ぶりの、眩暈と吐き気が付随する苛烈な衝動に、抗えない。抗おうとも思わなかった。

『それじゃ入れるよ』

短く告げた男に対し、咲美もまた抗わなかった。時間の無駄だと諦めているのか。

──奴の逸物を一目見た瞬間から、与えられた悦びがぶり返してるのさ。咲美は堪えきれない。散々繰り返して観たから、知ってるだろ?

(……そうだとしても)

先ほど咲美の見せた、夫への思慕がある限り。夫の側からの思慕もまた、尽きはしない。ままならぬ身体を持て余す彼女を、浅ましいとも思わなかった。

(僕だって、浅ましい肉欲に呑まれているのだから)

歪な形であっても、愛情には違いないと信じているから。他者の手によって喘ぐ妻の姿が嫉妬を煽るほどに、愛しさも募る。

『んあッッ、ンッ、ン───ッッ!』

藪沼の手に掴まれた咲美の尻肉が、喜々と弾む。引き寄せられるがままに逸物を呑んだ秘裂が、奥に溜まる種汁ではなく、湯と蜜汁とをひり落とす。

先だっての藪沼の言葉の通り、種汁を掻き出すために穿られていた膣内は、ほぐれきり、とろみも増しているのだろう。牡肉を受け入れるにあたって最高の環境を整えて待ちわびていた女陰に根元まであっさりと押しこめて、藪沼がみっともない嬌声を上げた。

『うはぁぁ、あったけぇぇっ』

湯と蜜と、性的昂揚によって火照り盛った膣内の温みに浸る男の、だらしなく蕩けた面と上ずり声が、心底羨ましい。羨ましいがゆえに、ひと際の焦燥感と対抗心が芽生え、肉の竿を扱く手が止まらなくなる。

『僕が出した精子だ。責任持って掻き出してあげなくちゃ、ねっ!』

『んひぃッ! やあぁ奥っ、強いのダメっ、ンッ、ンンッ! ンン───ッ!』

出っ腹ごとぶつかった藪沼の腰が、咲美の尻肉をたわむほど打ち据えた。連続で何度も、何度も。繰り返される素早い抜き差しに、潤みほぐれている膣肉もまた、最高の対応を見せる。

貫かれるたびに蜜を漏らす。引き抜かれる肉棒を追ってすがりつき吸着している膣襞肉を、他人棒を貪欲に欲するさまを、まざまざ見せつけた。

藪沼は責任持って精子を掻き出すと言ったが、実際に穿りだされているのは咲美の恥部。欲深き膣襞肉と歓喜の証である蜜汁ばかり。

藪沼の腰使い、素早い突き入れの直後に腰を回すさまが、膣の奥にへばりついている種汁をかえって摺りこまんとしているように、智の目には映った。

『ほりゃっ、ほりゃあっ! ははっ、さすがにしぶといっ』

それは、果たして奥にへばりつく精子のことであろうか。それとも、この期に及んで嬌声を堪えようと歯を食い縛る咲美に向けての台詞だろうか。

判断ができぬうちに、咲美に変化が訪れる。

『……っふ! うぅ……っ、ンンッ! ふぐぅっ、んぅ……ひあっあああ!』

まず、噛み締められていた唇が内より染み出た唾液でぬるつき、上唇が滑ることで食い縛りが解けた。唾液がたっぷり溜まった、見るからに温そうな口内の、サーモンピンクの粘膜が覗いたのも束の間。枷のなくなった口唇より、止め処なくよだれが漏れ溢れた。我慢を重ねた分甲高く轟く嬌声に乗って、唾の粒が飛散する。

声のリズムに合わせ、咲美の下腹部も波打つ。

『いいよ、いいよぉっ。やっぱりアサオカちゃんのマ○コの締めつけ最っ高っ!』

藪沼が、咲美の下腹の震えと膣の締まりが連動していることをわざわざ声に出して知らしめた。隠し撮りの張本人であるの男は、絶えず画面外の視聴者を刺激する。

『僕が経験してきたマ○コの中でも飛びっきりの! 相性の良さだよ! とろみも締まりも温さもっ、どれをとっても僕好みの、最高のマ○コだッッ!』