ヤブヌマ 侵食されゆく妻の蜜肌

快楽に呑まれゆく女を誘導する言葉の尻に、また一つ新たな要求が仕込まれる。

『やあああっ』

『言うんだっ! どこだっ? アサオカちゃんの、どこがいいんだっ?』

藪沼の右手指が割れ目の上端に息づく小指大の勃起クリトリスを摘まみ、摺り上げた。そこが答えと示すように、奴の剛直が膣壺を掻き混ぜる。

奴の卑劣な行動を、助け舟と思ったのだろうか。恥じ入っていた咲美の唇が、震えながら。

『ひ、あっ! おッ、やぁあ……ひっ、あっ、ぁんっ、だめぇぇっ』

『言ってごらんっ、はっきりとっ』

囁く奴の吐息にくすぐられ、耳朶を噛まれもした咲美の唇が。

『うぅ……お、お股……です……』

従順なる涙声で、とうとう認めた。

『そうかっ! いいんだなっ? オマ○コいいかっ!』

図に乗った藪沼が下卑た言い回しで復唱しつつ、そこを小突き上げる。

『いっ、いいっ、そ、それぇッ、いぃっ、のぉッッ!』

奴の腰が躍るたびに、咲美の上ずった嬌声が大音量で響き渡った。煌めく汗を撒き散らす茶髪の下の表情に、殻を破ったことによる晴れやかさが差しこんでいる。

『旦那がドアの外にいるのにかっ?』

咲美が、叫ぶことで解放感を味わっていると踏んだのだろう。藪沼がより羞恥を煽る台詞をがなり立てる。

(咲美は恥じ入るほどに、燃える。それくらい僕だって……!)

知っている。数えきれぬほどそれを活用して彼女を昂らせてきたのだから、当然だ。彼女の習性となるように育んだのは僕だ、との自負もある。

『いやっ、やっ、あひぁっ、あっ、んん、だめぇっ』

(ほら──)

夫の予測通りに卑しく悦を貪りだした女体の脚が、ぎゅっと男の──藪沼の腰に抱きついた。

『いいんだろっ』

『あッッ、いっ、イイッ』

『どこがっ。もう一回っ、僕と同じように言って! オマ○コ! さあっ!』

『オマ……○コぉぉ……っ』

一度認めたために、たがが緩んでいたのだろうか。ついに咲美の口唇が猥褻単語を紡いだ。そうして己の吐いた言葉の意味を咀嚼して、恥悦にまみれた牝腰を自ずからグリグリと蠢かす。

『ねぇっ、もう一度だけ……旦那には内緒で、会ってよ。ねっ?』

「……ッッ、何をッ」

──何を、言っているんだこいつは。瞬間湯沸かし器のごとく茹だった怒りが、さらにグツグツ、胸の内で煮え滾る。

『いっ……そんっ、なのっ。約束が違う……っ』

(そうだ。これは一度きりの……だからこそ僕も、咲美も……!)

夫婦の絆を確かめ合うための行為だと、己を納得させられているのだ。その根底から覆す愚挙を、咲美に請うなどと、馬鹿にするのも大概にしろ──。怒れる夫の見つめる先で、妻は何度も何度も首を横に振る。

それを見て取った藪沼の表情は、曇る──どころか、ますます喜々とほくそ笑み。

『じゃあ……代わりにこれだけ答えて。僕と、旦那。どっちのチンチンが好き?』

(……あぁ)

最初からそこが狙いだったのだ。納得してしまうと同時に、諦観が染む。

『……それも、言えませ、んふぅぁぁっ!?』

言えない、と告げた時点で、答えたようなものだ。

膣内の弱い部分を執拗に、小刻みな摩擦で摺り上げられて戦慄いた愛妻の口唇が、すでに口を割ったことにも気づかずに食い縛る。

『旦那のほうがいいのかっ?』

一転して腰をぴたりと止めた藪沼からの問いかけに、

『やっ』

咲美はただただ首を振る。それがたとえ「ピストンをやめないで」との願いを表す行動だったとしても、視聴する夫の肉棒の滾りを炙るに充分の破壊力があった。

『イきたいんだろっ』

何度も、何度も、必要以上に繰り返し、咲美の首が縦に振れる。

『正直に言えばイかせてやるっ』

吠えながら緩やかに動きを再開させた藪沼に対し。

『や、ぁぁ……っ、そっ、それだけはっ、だめぇぇっ』

咲美が最後の抵抗を見せた。だが、それも。

『ふん!』

藪沼の気合の入った一撃。男女の腿肉同士、奴の玉袋と咲美の尻肉とがぶつかり弾ける音色と共に、水泡と化す。

『ひゃうっ!!』

『絶対内緒にするからっ、今夜限りの秘密! そうだろっ? 僕だけの胸にしまっておくよっ。夜が明けたらまた、ただの上司と部下に戻れるっ。だからっ』

御託を並べた男の腰が、二度、三度、先ほどと同様の圧を伴って打ち上がった。

『ふああっああっひっ、ひやぁぁっ』

嫌、と明瞭に紡げなくなった後は、フルフルと首が横に何度も振れる。

一方で、身も心も犯そうと躍起になっている男の背と首に巻きつく手と、弾む腰にしがみつく両脚。女の四肢が、より一層熱烈に抱きつく力を強めている。

『イきたいんだろ!? 言って! そうすりゃ、また恥ずかしくなって、堪らなくなるよっ、最高に気持ちよくなれるんだッ』

『……っ! はひぃっ、あんっ、ンンッ、でっ、でもっ、でもぉっ』

続けて藪沼の腰が八の字を描く。膣の浅い所を捏ね回されて、じれったさに喘いだ咲美の腰が、自ずから激しく打ち下ろされた。そうして故意に苛烈な挿入摩擦を得たのみならず、深い位置を攪拌されて、膣全体をうねらせる。

迫る男の亀頭が、膣壺の奥底で縮こまり震えていた子宮の口に到達し、まるですりこぎとすり鉢がごとく、息の合った動きで摺り愛で合う。

『やはぁぅっ、うぅ、いっ、いいぃっ』

『いい? 気持ちいいんだねっ、アサオカちゃんっ』