ヤブヌマ 侵食されゆく妻の蜜肌

『はっは、自分から腰振っておいて、だめはないだろう!』

可笑しくて堪らないといった様相で、藪沼が腹を揺すった。その直後から奴の腰の突き上げもヒートアップする。クリアピンクの避妊具に覆われた肉の幹が、抜き差しの合間に覗く。汁気を含んだその肉幹は、常に脈動して喜悦のほどを見せつけた。

『ほらっ、ほらっ、ここだろ? もうアサオカちゃんのマ○コの中は隅々まで探検しつくしちゃったからねっ、弱点も全部っ、身体で覚えてるよっ』

膣の上壁を、エラ張り亀頭でくしけずるように擦りながら。先ほどまで受話器を握っていた手で、充血して小指の先ほどに膨れ上がったクリトリスに触れ、クリがすでに纏っていた咲美自身の蜜汁を、くるくると摺りこんでゆく。

『あっ、ひっ、ひゃぁぅっ、うぅ、やっ、だァァッ、やひゃああああっ!』

嫌だと口では言いながら、感極まった涙声を迸らせる。咲美はもう、声を殺すことはおろか、イヤイヤと首を振ろうとすらしなかった。

(……もう、限界が近いから。ここまで耐えた咲美を責める資格は、僕には……)

あるはずがない。そもそも責める気持ちが湧いてこなかった。

代わりに、卑しい情欲が、熱と鼓動と化して肉竿の内を駆け巡る。

今すぐ、咲美を抱きたい。元々の発端となった激情に憑かれたが──画面の向こうで他人に抱かれている妻を凝視するのをやめられず。限度一杯に喜悦を溜めこみ爆発間近の肉竿を、己が手で扱くこともやめられない。

『いいよ、締まってるっ締まってるっ……めちゃ締まってるよアサオカちゃん!』

一度の絶頂を経て極上の蕩け具合となっている膣穴を、思うさま堪能する藪沼との状況差を、恨めしくも愛しく感じずにいられなかった。

奴よりも長持ちさせるとの思念にも憑かれ、ただひたすらに自慰に耽る。

『ああ……ッ、だっ、ひひゃあっ、ぁひっ、いぃぃっ! いっひゃぁぁううっ』

咲美が、腰をせわしなく振り立てながら、不明瞭な響きを吐き出した。けれど、口の動きから判別できる。たった今、妻は「イッちゃう」と、先刻藪沼に仕込まれた通りに果てる宣言をしてみせたのだ。

『いいぞ、思いっきりイくんだっ! もう我慢しなくていいんだよっ』

誰も見てない。僕と二人きりだからね──そう吠えた奴の口端から幾粒もの唾が飛んだ。内、何滴かは咲美の腹にも付着する。それでも、彼女は恍惚と震えるばかりだった。厭う余力もないのか、あるいは唾のヌルつきにすら感じ入れるほど鋭敏に性感を高めさせられているのか。

いずれにしろ惚けきった表情となり、藪沼に負けぬほどのよだれを滴らせた咲美の、淫猥に綻びた顔を、どす黒い獣欲を乗せた細い眼光が射抜く。そうして男女が互いに頷き、何事かを確認した。

『あんッッあっあっひッあぁッだめっいくぅぅぅっ……!』

『いいよっ、イって! 僕もじきにっ、このままっ、ゴム越しだけどアサオカちゃんの中に出すからねぇッ!』

(二人揃ってイけるタイミングを……計ってた、のか?)

藪沼の宣言にただ頷くばかりの咲美を見るに、そうとしか思えない。突き上げられて上下に激しく揺れているのが頷いたように見えた、などと言い張れるほどの、妻に対する幻想は残ってはいなかった。

「はぁっ、あぁぁっ……!」

自慰に励む手中で、みじめな肉竿が強がるようにうめき、弾んだ。内に迸り続けている熾烈な痺れを、白濁色の蜜に乗せて噴き上げたいと、繰り返し繰り返し訴えかけてくる。それでも、藪沼より先に果てるわけにはいかないという意地が、きつい締めつけとなって、噴射口のすぐ手前にまで迫り出てきた喜悦の塊を押しとどめる。せき止められた塊が一層女々しく竿内部から脈を打ち鳴らし、狂おしいほどの甘露を味わわされても、意地が頽れることはなかった。

そうして、泣き出したくなりながら見つめる先で。

『ひぃあっああッ、いぐ、いぐっ、いぐううぅぅぅぅぅっ!!』

少しの堪えもなく、肉体の求めるがままに叫び散らし。反らせた背を、つい立て代わりの腕を、ピンと張ったつま先から汗だくの腿までを、へそ穴に汗を溜めた腹部をも痙攣させて。咲美が、二度目の絶頂を極める。

引き攣れは当然、肉棒を呑み食んでいる膣内にも伝染し。

『んほぉぉぉっ! 搾り取れっ、咲美ぃぃぃぃっ!』

目一杯に押しこまれた藪沼の腰が、ぶるり、ぶるぶる。断続的に震えた。

オルガスムスの渦中にある膣肉の蠢動。止め処もなく溢れる汁から醸される、うだるような熱。すがるように吸いつく襞肉の愛おしさ。すべてを味わい尽くしながら、藪沼が射精する。

『ひっあ! ああっ! ひっ、いっ、んっ、んんんんんっ!』

避妊具越しにではあっても鮮烈に伝わる牡汁の勢いと熱量を受け止めて、膣壺が負けじと喜悦の震えを放つ。進言通りの絞りを得られた剛直と、その根元に備わる玉袋とが喜色満面、脈動した。

一滴残らず、咲美の中に注ぐつもりなのだ。直感してすぐに、手淫に耽っていた智もまた最大限の悦波に見舞われる。

(嫌だッッ!)

藪沼に注がれる咲美を見つめながら、射精する。そんな無様を曝すくらいならと、歯を食い縛り、それ以上のきつさで肉竿に絡めた五指を引き絞る。そうしてすんでのところで悦波をやり過ごし、暴発を回避した。