ヤブヌマ 侵食されゆく妻の蜜肌

藪沼は意に介することなく膣壺を掘り続けた。すでに勝手知ったるといった感じで、緩やかな速度はそのままに膣奥を突き、膣壁を摺り上げ、浅い位置に出戻っては執拗に舐るように擦る。

それを受けて咲美は──。

『あぁっ、あぁっ、あぁっ』

短く唸るような響きを口腔より発し、背を反らせ、手を後ろについた体勢となって、より深い位置で常に肉棒を味わいたいと──無言の催促を重ねていた。

(僕がフロントへ行き、大浴場を探している間も、ずっと……)

悔しい、とか、悲しい、とか、そんな感情も吹き飛ばすほど、画面の中の妻は背徳的な淫靡を帯びている。

また、固定電話が鳴った。二度目の、フロントからの電話。

『いいよ、積極的になったアサオカちゃん、とってもいいっ。ほらっ、ほらっ、これもいいだろっ』

『はひっ、ひっ、ん……! ああっ、あぁっ、あっ、あっ、ああっ』

ズン、ズンと音が聞こえてきそうな重たい一撃を、咲美の最奥に見舞い続ける藪沼。ニタリと緩んだその醜悪な面を、咲美が潤んだ瞳で仰ぎ続ける。

藪沼の手がにゅっと枕元に伸び、受話器を握った瞬間も、咲美は口を噤みつつ、腰の動きを止めなかった。

『もしもし』

藪沼とフロントマンとの会話が二、三、交わされたのちに、聞き覚えのある内容が紡がれだす。

『いやぁ、すみません。部屋の風呂に入ってたんで気づきませんで』

白々しい嘘を吐きながら、咲美の膣を突き上げ。

『……ッ! っ……~~ッ!』

必死に声を殺す咲美からの睨みを受け流し、あやすように腰を回しては、女体の甘美を引き出してみせ。

『それがですねぇ……』

もったいぶった物言いで通話相手を焦らしつつ、その細君である女の乳房を、空いた手で捏ね繰り、ピンと尖った乳首を摘まみ。

『ちょっと酔っ払っちゃって、気分悪くなったみたいで寝ちゃったんですよ』

また堂々と嘘を連ねて。

『もうこんな時間ですし、明日までこのまま寝かせてあげましょうよ。ねっ』

図々しくも言ってのけた。その発言内容は、奴の視線の先にいる咲美に対しても向けられたものだ。

咲美の、ぎゅっと結ばれた唇が震えだす。堪えに堪えるその口端からは、とろみを帯びた唾液がひと筋、伝っている。

『……何を今さら焦ってらっしゃるんですか?』

(……この言葉も、か。僕だけじゃなく、咲美にも向けて……今さら、もう遅いのだと。噛んで含めるように……刻みつけて)

『元々この話はあなたから言い出したことじゃありませんか。第一、もう奥さんは私と情を通じたんですから。今さら、同じじゃないですか』

(咲美が持ち掛けたのだと、もう繋がった事実は消せないのだから、と……だから、楽しんでしまおうと、いうのか……っ)

咲美の応答を待つことなく、藪沼は卑しき思想を即時実行する。

手始めとして、会話の合間に咲美の乳房をしゃぶり。

『ンッ、ン、ぁ……ッ、っふ、ぅぅ、っふ、ぅンンッ』

声を殺すための踏ん張りが、膣の締めつけを誘引する。そうして絞られた肉棒が、返礼とばかりに蜜壺を掻き混ぜ。グチュグチュと、浅ましくも心地の良い水音を奏でてみせた。

『……たっぷり、ジリジリしてください』

細く研ぎ澄まされた奴の眼光は、ただ咲美の焦れ悶えるさまのみを映している。電話の相手が夫であるのを悟った咲美の表情に狼狽と、怯えが奔るほどに。突き上げる奴の腰使いは陰湿なねちっこさを隠さなくなった。

受け止める側の尻が、ただ跳ね上げられるのではなく、相手の突き上げるタイミングで自ずと振り落とされ、最大限の深さで結合を果たしている。

『……ッッ、ふ、ぅぅっ……んぁっ、ァァ……んんんんぅぅっ』

涙目で、なんとか声だけはと唇を噛んで堪えている女体の股座からブチュッ、ブチュッ、と卑猥極まる音色が漏れでる。咲美の、心と肉体の乖離度合いを示すように。唇を噛む力が強まるにつれ、牝腰の揺れ幅は大きくなっていった。

『いやあ、最高に可愛いですよ、奥さん。ごちそうさまでした』

味わっている途中であるにもかかわらず、しれっと藪沼が言い放つ。それを行為の終了宣告と受け止めたか、咲美の目端からぽろり、ぽろぽろと涙の粒がこぼれ落ち。

にんまりと笑んだ藪沼の腰が膣の上壁を摺り上げた途端に。

『ふぐっ……ンンッ、ン───ッッ!』

右手で口を押さえた咲美の裸体が、痙攣を起こした。

時を同じく、諸々の音が通話相手に漏れ聞こえぬよう、藪沼の手が受話器を覆い塞ぐ。

(おかげで僕はこの時ものうのうと、どす黒い情欲に浸った……ままで……妄想を超える痴態が繰り広げられている最中だなんて、思いもせずにっ)

藪沼からすれば、お笑い草の道化に思えたことだろう。

『まあ、もう少ししたら起こしてお返ししますので、ご安心ください。私、裸なんで失礼しますね』

最後だけ真実を語った奴が通話を打ち切るや、堪えきれずにニタァと破顔する。それを視認したのか、しなかったのか。

安堵の表情を浮かべた咲美の腰が、先んじて躍りだす。

『あはあッッ! ああ───……ッ』

まずひときわ強く藪沼の股間を尻肉で打ち据えて、甲高い鳴き声を轟かせ。

『んひっ、いはああっ、だ、めっ、あァ……ンッ、だめぇぇぇぇっ』

我慢した分を取り返すように、小気味のよい回転で牝腰が上下に弾むたび。彼女の汗と蜜とが四方に散った。画面越しにも伝わるほど、藪沼と咲美の肌の間、周囲には淫猥な匂いが立ちこめている。