ヤブヌマ 侵食されゆく妻の蜜肌

『ひやっ! ひっ、あぁっぐぅっ、言っ、わないでっ、そんなことっ、言われたら、あ、あた、っひぃっあっああ───っ!』

藪沼の臆面もない台詞に照れさせられたのも束の間。激しく突き上げられ、前のめりの乳房を揺らされた咲美が、嘶いた。ぎゅっと股を閉じ、きっと膣も懸命に絞り締めた状態で、より藪沼との摩擦を楽しもうと躍起になっている。

(時間がないから……。戸の外で僕が待ってると、知っていて。待ってる僕の気持ちを察してくれてもいるから……だからっ)

どれほど肉の欲に溺れていても、愛妻の胸内から夫への思慕が消え去ることはない。それだけは、前回のDVD映像全編、そして今回のDVDをここまで観てきて、揺るぎなく信じられる。

だが、それだけにより哀しい。

『そらっ! おっ、ほォォッ! いいっ! アサオカちゃんのマ○コっ、繋がるたび素直になってくねぇッ。こんなにも相性最高なんだからッ、仕方ないよねぇッ、僕が手放したくなくなっちゃうのもッ、しょうがないッ! そう、思わないかいッ!』

連続で膣壺を突き貫き、優悦に浸った男が盛りも露わに吠え立てる。

『ひゃぁぅっ、あうっ、ぅんんっ! い、言わないでって、ひゃうっ、あっああっひやあああっ、思わないっ、ですっ、絶対っ、思わないぃっ』

拒む言葉が藪沼の腰振るリズムに乗って弾む。同じく奴の突きこみに合わせたリズムで打ちつけられる牝尻が喜々と震え続けているのが、はっきりと視認できた。

ピストンのたびにブポブポと、蜜汁の攪拌される音色が轟く。その音の大きさが、咲美の昂りを何よりも表していた。藪沼の逸物のもたらす快楽を手放したくないのだと、言葉よりも雄弁に示している。

『旦那さんには内緒にするっ、約束するよ! だからお願いっ』

内緒、約束。その二言を告げる間は激しさを保った男のピストンが、お願いと乞う段になって急速にペースダウンした。

『いっ……』

──嫌、やめないで。そう言い募りかけた咲美の口唇がすんでで思いとどまり、再び食い縛られた。さすがに三度も同じ手は食わぬと、多少なりとも耐性のついた心身に言い聞かせているのか。

『一度きりって……約束です……』

後ろの男を振り返り、きっと睨みつける瞳には、彼女なりの矜持が詰まっている。夫への思慕が、彼女を支えているのは間違いない。

だが、その夫は。

(咲美……そうだ、耐えてくれ。耐えて、耐えて……その果てに)

卑しき願望と期待を抱いて、自慰の手を速める。

「あんたもっ! この程度じゃ……ないんだろっ!?」

かつて自信満々に咲美を満足させると言い放ってみせた藪沼に向けて、湧き出るまま挑発的な言葉をぶちまけた。

『お願いっ!』

期待に応えるように、奴の口元は笑んでいる。それを観てなお肉竿を扱く手に熱ををこめた矢先に、画面上で新たな展開があった。

悠長なペースはそのままに、いったん腰を引いての強烈なピストンが、蜜濡れた膣壺へと見舞われる。

『ひゃうっ!!』

『絶対内緒にするからっ!』

『あっ、あっ、あぁっ!』

二、三、四──そして絶え間なく。回を重ねるごとに速度を上げた突きこみが、焦れだしていた膣穴を容赦なく穿つ。

『うんと言わなくていいっ、ただ、頷いてくれるだけでいいからっ』

囁きながら上体を倒した藪沼が、咲美の背に覆い被さった。

当たり前に咲美の胸元へと回った奴の両手指が、これ見よがしに蠢いて、左右それぞれの乳房、夫の手には余るサイズの膨らみをしっかり抱き締め、揉み捏ねる。

『いやぁっんっ、ア……はぁっ、は、あぁっ どうっ、してぇっ……?』

ジンとした疼きに見舞われ通しの乳首をなぜ攻めてくれぬのか。そう、目で訴えかけた咲美に、にんまりと応じ。乳輪を指腹で摺り愛でながら、藪沼は腰の速度を一段と上げた。

『もう一度だけでいいんだよ、アサオカちゃん、お願いっ!』

それと同時に、再度の懇願をする。

『はんッあッンッ、でっ、も、そんっ、なあああっ、だめっ、だめ、だめぇぇッ!』

激しい突きこみを浴びせられるたび、湯を掻き分けて前へ前へと歩む咲美。隠しカメラに接近する彼女の乳房が、藪沼の手指にギュッと抱き留められているさまも。悩ましくも艶めかしい美貌が、快楽によって歪んでいるさまも。峻烈に夫の眼に焼きつき、痛切な衝撃が心臓と肉竿を撃ち抜いた。

『はぁぁんんっ! はぁっ、はぁ、はーっ……ぁひィィッ!?』

とうとう風呂桶のふちにたどり着き、堪らず両手をついた愛妻の、目一杯に勃起した左右の乳頭が、捏ね繰り回されている。股の焦れの解消と共に意識外に追いやろうとしていた胸の疼きが、瞬間的に膨張し、妻の矜持をも呑みこんで──。

『イきたくないのっ!』

腰振りと、乳首弄りの手を緩めることなく紡がれた藪沼の問いかけに、咲美は、ただフルフルと首を横に振る。イきたくないわけではない、との意思表示。夫のモノでない肉棒によって果てたいのだと伝える際、カメラにより接近した妻の表情は、浅ましくも蕩けきっていた。それが底抜けに淫靡で、愛おしく。

(咲美を愛してる、から……誰にも奪われたくないんだ。だからっ……! 藪沼に開花させられてゆく咲美を、もっと観たい。これからも……ずっと)

夫として剥き出してやれなかった数多の顔を、他人の手で露わにさせられてゆく妻。彼女の内にまだ見ぬ顔が隠されているのなら、すべて観たい。愛しき人のすべてを、他人の手が介在する形であっても知りたいと願った。