女子高生メイドと穴奴隷女教師

(しかし……、しかし、それでも……ッ)

(…………ッ)

いくつもの想念おもいが真菜美の頭の中で交錯する。

ざッ。

それらが重なり合って、収拾がつかなくなり、考えがまとまらないまま、真菜美の足は前に向かって、間名瀬透がいるマンションに向かって、動きだしていた。

ピンポ~ンッ。

まだまだ、逡巡に逡巡ゆきつもどりつを繰り返しながらも、真菜美の指はインターフォンのボタンを押していた。

「はい」

──!!ドキンッ!──

部屋うちがわからの応答いらえに、真菜美の心臓は跳ね上がった。

それは女性の声ではなく、若い男性、少年の、間名瀬透の声だった。

「かッ、加納です」

何故だかわからないが、早、涙がにじむ。真菜美は耳たぶが熱くなるのを自覚し、目元をぬぐいながら、かすれた声を絞り出した。

「ああ、センセイ? 随分と遅かったね。まあ、入りなよ」

カチャッ。

マンション入口の電動錠ロックがはずされる。

「はい」

『御主人様♡』という言葉が口からついて出そうになるのをかろうじてこらえて、真菜美は生徒のマンションに入っていった。真菜美はその時、昨日の家庭訪問から、まだ一日と少し、30時間と経っていないのにあらためて気づいた。

くちゅッ。

(あン……ッ♡)

手足を動かすと、女教師の肉体カラダは早くもウズいていて、妖しくざわめいていた。

「やあ、センセイ、遅かったね?」

先ほどと同じ言葉で出迎えた透はTシャツにジーンズだけの、しごくラフな、くつろいだ服装だった。到底、担当教師を迎える正常マトモ服装かっこうではない。一方の真菜美は淡いベージュのスリーピースをぴっしりと着こなし、いかにも女教師然としたらしい、きっちりとした身なりだった。濃い茶色のバッグを胸にしっかりと抱え込んでいるのは、その蠱惑的に巨きなふくらみを隠すためなのか、胸の内の不安を抑え込むためのモノなのか、はたまた、不謹慎な、倒錯した性の快楽に対する期待トキメキを悟られぬようにするためなのか、真菜美自身にもわからずにいる。

「おッ、お邪魔します」

そう言いどもりながら、生徒のマンションに入った真菜美は透から、ビデオカメラを渡された。

「?」

戸惑う女教師に透は短い言葉を放った。

「それでも、間に合って良かったよ。ちょうど、いいトコロなんだ」

ビデオカメラは小型で軽量、最新鋭のモノで、すでに録画が始まっている。とても説明とは呼べない、生徒の説明に真菜美はますます、困惑してしまう。

「扱い方はわかるよね? 液晶画面ビューアーを見ていて、画面中央に被写体がくるようにすれば、自動で焦点はあうンだから、簡単だろう?」

そう言い捨てると、透は、奥へと向かう。真菜美は胸にバッグを抱え込み、手に動いている小型のビデオカメラを持って、後を追うしかなかった。透が向かったのは、昨日の応接室よりもさらに奥まったトコロにある部屋だった。

「ココだよ」

そう言った時、透は真菜美の方を振り返ったが、その言葉「ココだよ」の前に「今日は」と言ったのかもしれない。その部屋に入った瞬間、真菜美は目を剥いた。昨日の、高校生メイドくるみがいたのだ。

──!!──

当然予想された事態コトとはいえ、真菜美は緊張し、頰を赤らめずにはいられなかった。

しかし、真菜美が緊張し、赤面したのは、その奥の部屋に美少女メイドのくるみがいたためだけではなかった。問題はくるみの今日の衣装にあった。

くるみは昨日と同じメイドの服装いでたちだったが、様子おもむきがまったく異なっていた。くるみは昨日同様、ゴスロリ調の、黒と白のメイド服を着ていたが、ブラウスの胸元は大きく左右に開け放たれ、腰まわりはスカートはつけておらず、飾り縁フリルのついた前掛けエプロンを腰にまとっただけだった。膝上まである黒くて長いロングストッキングを履いているのに、下着はいっさいない。しかも、彼女くるみは胸の膨らみの上下に縄が走り、背中で両方の肘をくっつけるようにして縛られ、足が床につくような立ち姿で部屋の中央に天井から吊られていた。

縄目から絞り出されたくるみの乳房は年齢とし相応にふっくらとしていて、かすかに揺れ、いかにも柔らかそうだった。しかし、その乳房には何本もの針が突き刺さり、血がにじみ、流れ出して、凝固していた。ムキだしのお尻はもっと悲惨だった。真っ赤な手形が重なり合うようにつけられ、腫れ上がっていた。真菜美がやってくるまでの間、透にさんざん平手打ちスパンキングされたに違いなかった。

そして何より、真菜美を驚かせ、戸惑わせたのは、美少女メイドが浮かべている表情だった。むごたらしい加虐に恐怖し、戦慄しているのでもなく、また、あきらめ、自暴自棄になり、無感動に陥っているのでもなく、はたまた、激痛に忍び泣いているでも、真菜美という同性の闖入者に対して恥ずかしがっているでもなかった。

その乱れた短かめの髪が張り付いている、整ったおもざしは薔薇色に紅潮し、光り輝いていた。

「はぁぁンンン……ッ♡」

その顔だけを見ていれば、到底過酷な責め嬲りにあっているとは思えない。まるで相思相愛の逢い引きをしているような、恋する乙女の面持ちだった。倒錯した性の悦び、残酷無慈悲な少年主人に仕え、我が身を捧げる悦びにひたりきる、美少女高校生が透に視線を向ける。その大きくつぶらな黒い瞳には、ほとんど同じ場所・方向にいる、巨乳・美貌の女教師などまったく映っておらぬかのようだった。