真菜美の肉体は、度重なる電撃に見舞われ、緊縮しているものの、先ほどまでのくるみの手にかかり、かなり乱れていたので、脱がせるのは、きっちりと着こなしていた時に比べて容易そうだった。真菜美のブラウスの前が大きくはだけられ、ブラジャーのフロントホックがはずされる。
ぱちッ。
ぷるッ、ぷるるんッ。
真菜美の大きな乳房が、半球状の布地を押しのけるようにして、弾みながら飛び出してくる。真っ白な、牛乳を塗り固めたかのような、柔らかく、まぁるい、母性の象徴だった。いただきに、縮こまるようにしてくっついている桜色のような突起が、初々しく、可憐だった。
ちッ。
少女はその可憐な美貌にはそぐわない悪意を持った舌打ちをする。
「まったく、憎たらしいほどデカイおっぱいね。この、デカ乳で、御主人様を誘惑したのね」
ぎゅううぅッ。
「くは……ッ、ぐははハ……ッ」
柔らかなふくらみをつねくられ、その痛みに真菜美はあえいだ。
ジーッ、カシャッ、パシャシャッ。
カメラの、デジカメのシャッター音がした。
──!!──
まだ、視力が回復していないので、よくわからないが、どうやら撮影されているようだった。
『何を』『誰を』『どこを』『どんなふうに』撮影シているのか、聞かずとも、見えずともわかった。真菜美は、力の入らない身体で、あらんかぎりにもがく。
うふふふッ。
すぐ耳元で、少女の、くるみの、笑い声がする。
「そんなに暴れたら、また電撃に見舞われますわよ」
──!──
「それとも、加納センセイは、電撃がお好み?」
うふッ、うふふふッ。
息を呑む真菜美を剥き上げながら、くるみがさらに笑いかける。
「もっとも、電撃をもらいすぎると、ショック死しちゃうけれどね」
──!!!──
整ったおもざしを青ざめさせる真菜美の両腿を開きながら、くるみがさらに嗤う。
「もし、そうなったら、どうなるのか、教えてさしあげましょうか? まず、警察を呼びますの」
「……」
「警官が来たら、こう言うの。『御主人様、坊ちゃん、透様が、三日間学校を休んだので、相談に来た担当教師をお上げしたところ、色仕掛けで、透様を誘惑、説得しようとした。坊ちゃんから、助けを求められた私は、護身用にいつも持っているスタンガンで気絶させようとした。ところが、いつまでたっても失神から覚めないので、確かめたところ、死んでしまっていた』って」
──!!!!──
真菜美は心臓まで青ざめ、胃の腑が冷たくなった。
そして胸の内で反論する。
(だッ! 誰がッ! 誰が、そんな作り話、信用するモノですかッ!?)
うふッ、うふふふふッッ。
うら若い、乙女のメイド少女が年老いた魔女のように嗤い、さざめく。薄気味の悪い嗤いが、真菜美の聴覚いっぱいにこだまする中、くるみは続ける。まるで真菜美の内心をのぞいたかのようだった。
「別に、誰も、信用せずともかまわないのよ」
(えッ!?)
いぶかしむ女性教師に、少女が解説する。
「誰も信用しなくても、警察は一応、その線で捜査をするわ。それが職務ですものね。だけど、そうなると、どうなるのかしら? 想像してみて、センセイ」
──!!──
真菜美は暗然となった。
警察は真菜美の現在や過去の、交友関係、とりわけ異性関係を捜査するだろう。
『先日亡くなった、加納真菜美サンのコトについて伺いたいのですが』
『加納サンとはどのような関係でした?』
『アナタから見て、加納サンはどのような方でした?』
『ところで、加納サンの交友関係はどんなモノでしたか? とりわけ、お伺いしたいのは、異性との関係なんですが』
そのような質問が、刑事からなされ、そのような質問をされたという事実が、真菜美の周辺に積み重なり、巡り巡っていくとどのような事態になるのか、容易に想像できた。初めの頃は『加納真菜美サンはいたって、フツーの女性で、男女交際も人並みの方でしたよ』と言っていた人間も、『ケーサツがあんな質問をするのはおかしい。ひょっとしたら、自分が知らないだけで、加納真菜美という人間は、裏で派手な、何かフツーではない異性関係を営んでいたのではないか?』と思い始め、その考えがさらに巡回して、『加納真菜美は、自分(たち)が知らない所で、派手に遊んでいたようだ』『何かとんでもない異性関係を営んでいた』という雰囲気が定着してしまいかねなかった。いわば、『火のない所に煙を立ててしまう』のだ。
うふッ、うふふふッッ。
電撃による痺れから解放されたにもかかわらず、抵抗する力が弱まってきたのを見てとった、メイド少女が真菜美の耳に魔女の吐息を浴びせる。
「どうやら、センセイにも自分の今の状況がご理解できたようね? 嬉しいわ。それじゃあ、もう一つ、言ってあげましょう。センセイが死んだ後、御主人様、透お坊ちゃんをセンセイの学校が手放すと思う?」
──!!!!──
完全に真菜美の肉体から血の気が引いた。
思えなかった。
絶対に、真菜美が勤める明翔学園が、間名瀬透のように、金持ちの家の、そして本人そのものに非常に将来性のある、学生を手放すとは、到底思えなかった。万が一、万々が一、明翔学園が手放したとしても、引き受ける学校がいくらでも、それこそ掃いて捨てるほど現れるに違いなかった。そうして真菜美のコトは闇から闇へと葬られる可能性が高いのは否定できない。どんなに真菜美の両親や肉親たちなどが頑張ったトコロで、何かにつけスキャンダルを好む世間の風評を覆すのは困難を極める。