性体験がなかったわけではないし、また、性知識もそれなりに備えていると、真菜美は自分では考えていたが、それが独身の女教師の勝手な思いこみ、単なる独り善がりに過ぎなかったことを思い知らされていた。
その晩、真菜美の目の前で展開された、真菜美の教え子である男子中学生と女子高生との間で交わされた営みは、今まで真菜美が体験し、あるいは見聞きしてきた、いかなる行為とも、レベルそのものが違っていた。それは単に物理的に異なっているというばかりではなく、そこに含まれている精神的な質や量などは、真菜美が認識できるレベルをはるかに超えてしまっていた。
(……いったいぜんたい、あの二人の間には、何があるというの?)
真菜美はあらためて、そう考え込まざるを得なかった。
そしてその行為の淫ら極まりない清らかさ、狂おしく、ひたむきな愛の凄まじさに、真菜美は戦慄とともに妖しい興奮を覚えずにはおれなかった。
(……あんなふうに愛せたら)
(……あんなふうに愛されたら)
そう考えずにはおれない。
あの後、膀胱がカラになるまで失禁し続けたくるみを、射精し終えた透は邪険そのものの態度で叩き起こし、肛交の後始末を命じた。くるみはフラフラになりながらも、タオルやティッシュペーパーではなく、くるみ自身の舌と唇、口で透の男根を清め始めた。くるみは、透の汚れている男根を嬉々として舐めしゃぶり、透の精液と自分自身の腸液、クソカスまで丹念に舐め清め、さらには自ら進んで、自分の粗相の後始末、二度にわたって床に飛び散ったくるみ自身の尿水を這いつくばって舐め取った。そして、その最中には「催した」透の小便を直接口に入れて飲み下し、「御主人様の美味しい小便をお恵みいただき、ありがとうございます♡」と微笑みながら土下座して礼を言い、また、「就寝の挨拶」にと、透の肛門に〝忠誠の〟口づけを念入りに施したのだ。
完全に常軌を逸したくるみの奉仕と、透の暴君ぶりに、真菜美は度胆を抜かれっぱなしだった。
ぶるッ。
真菜美は今観たばかりの光景を思い出して、布団の中で身を縮めた。飲尿、肛門への口づけ、それに自分自身の小水の舐め取り、など、真菜美にとっては到底理解できないし、絶対に受容もできない、おぞましく、穢らわしい、異常極まりない、狂人の所業だった。
しかし、しかし──。
その行為を完遂した美少女が見せた、満ち足りた法悦の表情は、真菜美の人生観、価値観を根底から覆すモノだった。
『人間は生まれながら、一個の人格を有した個人である』
『人間は等しく平等であり、独立している』
『人間の人格、並びに権利は絶対に守られなければならない』
真菜美が生まれる前から、過去の日本の歴史あるいは人類の歴史を軽視、無視して行なわれてきた所謂〝民主〟教育に冷水を浴びせ、真っ向から否定し尽くすものだった。
(一人の人間に完全に隷属し、その人間に身も心も捧げる幸福がある)
そう考えなくては、あの飛び抜けて美しく可愛い女子高生の、幸福極まりない、圧倒的に魅惑的なドレイ姿を説明することなどできなかった。
「うン……ッ」
真菜美は今晩、何度目かになる寝返りを打ち、長い脚を交錯させた。
くちゃッ。
「あくぅんむ……ッ」
真菜美は布団の中で短い声を上げ、頰を赤らめた。乳首が尖り、秘部が湿っていた。肉体が疼き、頭の奥が痺れる。間名瀬透と、園寺くるみの、倒錯した愛の営みを間近に見せつけられて、アテられ、真菜美の肉体は火照っていた。
「うッ、うぅぅンン……ッ」
真菜美は寝返りを打つ振りをして、脚を再度入れ替えて、股間に掛け布団の一部を挟み込み、こすりつける。
ぐぢゃりッ。
真菜美は自らの肉体に指を使い始めた。自分の手指を使った行為などで、自分の肉体の疼き、欲求不満が解消されるハズなどないコトを知っていたが、他に術はなかった。
「うッ、うぅぅンンむ……ッ」
くちゅくちゅくちゅりッ。
真菜美は自分が今晩、観て、記録した映像を思い出しながら、自慰行為を始めた。
美貌の女教師は、その晩、なかなか寝つくことができなかった。
翌朝。他人の、しかも、教え子の家で思いっきり自慰行為に耽ることができず、そのために、充分な性的な快楽を得ることもできなかった、真菜美が起き上がって居間に行くと、真菜美の教え子は、朝食を頬張りながら、メイド姿の少女に口舌奉仕をさせていた。
「センセイ、おはよう」
「……おはよう、ございます」
厚手の生地を用いた、大きな椅子にゆったりと座ってふんぞり返ったまま、生徒は軽く会釈をし、美貌の女教師は腰を曲げて、お辞儀をする。その間も透は、左側の机の上に置いた二台のモバイルPCを操り、三誌の新聞に目を走らせ、一台の大型TVで朝のニュース番組をザッピングしていた。右の机の上には、スクランブルエッグと焼きたてのパン、それにホットコーヒーと、オレンジジュース、ミルク、それに果物が何点かと、野菜サラダが大盛りに置かれていた。栄養とカロリー、バランスを考えた理想的な朝食だった。