年下の女子高生に礼節を説かれる理不尽さにどう答えて良いのかわからずにいる女教師にイラつきながら、くるみが早速命令する。
「さあ、服を脱いで」
──!──
ついで、真菜美の先輩の女子高生メイドはわざとらしく部屋の壁に掛かっている時計を確認しながらつぶやく。
「時間がないんだから。今が、7時半だから、御主人様がお帰りになるまで、6時間、いや、5時間半、ってトコロかしら……。その間に……」
後半は、くるみは完全に口の中で自問自答していて、真菜美が聞き取ることはできなかった。どうやら、くるみはこれからの、6時間、5時間半の間に何をすべきか、段取りを考えているらしかった。同性に、しかも年下の同性に「裸になれ」と言われて素直に従うことができずにいる女教師に、女子高生メイドは柳眉を逆立てた。
「邪魔くさい女性ね」
縄を取り出してきて、ソレをしごき始めるくるみに真菜美は思わず後退してしまう。
くるみは嗤った。
「逃げたいなら、逃げていいのよ。この場からと言わず、この部屋だけじゃなくって、マンションからでも逃げればいいのよ。でも、逃げられないでしょう?」
そして、くるみは真菜美が思ってもみなかったセリフを口にした。
「アナタ、昨日、オナニーしたでしょう」
──!!!!──
(ど……ッ、どうしてそれを……ッ!?)
目を大きく見開く女教師に、女子高生メイドがさらに続ける。
「しかも、それで満足できなくて、欲求不満いっぱい。悶々とシているんでしょう?」
──!!!!──
(どッ、ど……ッ、どうしてソレを……ッ!? そんなコトを……ッ!?)
真菜美は心の中で飛び上がった。
ふふんッ。
くるみは鼻を鳴らした。そして説明する。
「このマンションのすべての部屋は監視されているの。今朝、貴女の部屋に取り付けられたカメラの画像を解析した御主人様がそう判断なさったの」
「……そ、そんなの、プライバシー侵害だわッ! 人権蹂躙よッ!」
いかにも世間知らずの女教師らしい、青臭い発言に十歳近くも年下の女子高生は肩をそびやかした。
「奴隷に、いいえ、アナにプライバシーだの、人権だの、ある訳がないでしょう?」
──!!!!──
絶句する真菜美に真菜美が絶対に考えつかない科白を口にする。
「むしろ、感謝しなさい」
──!!!!──
(な……ッ、何ってコトを言いだすのッ!?)
(正気ィッ!?)
一瞬、真菜美はくるみが発狂したのかと疑った。そんな真菜美にくるみが補足説明する。
「私の、私たちの御主人様は、聡明でお優しく、責任感もおありになるから、私たちのコトを、健康を気づかって下さる。これがSMを誤解している、馬鹿な御主人様、──無能な上司でも構わないケド──に引っかかってご覧なさい。ただ、ただ、要求するだけで、ロクな待遇も与えてくれないわ。全部責任は奴隷持ちよ。身も心もボロボロになるまで奉仕させられて、挙げ句の果てに身体を壊して、御払い箱で御仕舞いなのよ」
──!!!!──
……指摘されれば、その通りなのかもしれないが、しかし、「わかりました」と受容する事はできかねた。
「だ……ッ、だから……ッ、だからって……ッ」
なおも、教え子の非を言い立てようとする女教師に、女子高生メイドが癇癪玉を爆発させる。
「本ッ当に邪魔くさい女性ねッ! 時間がないって言っているでしょう」
乱れた髪を煩わしげにかきあげると、怒鳴った。
「貴女は時間を浪費しても構わないけれど、私はそんなコトはできないのッ! 逃げ出すのなら今すぐ逃げる、逃げ出さないのなら、観念して。……考えないでッ! 考えるのなら、服を脱ぎながらしてッ! 逃げ出したくなったら、いつでも返してあげるわよッ!」
考え込むことも許されないまま、一方的に急きたてられて、真菜美は昨日着てきて、また、今日も着た服を脱ぐしかなかった。
するりッ。
衣擦れの音とともに、真菜美の肌があらわになっていく。女らしいまろみと滑らかさに満ちた、白い肌だった。背中に垂れ落ちる、光沢のある、たっぷりとした艶やかな黒髪が、白い肌の透明感をいっそう引き立てている。華奢な骨組みに薄い肉がついているだけなのに、角ばった印象を与えない。それどころか、丸みと柔らかみに満ち、母性的ですらあった。中でも、胸の膨らみがそうだ。「肉の果実」という表現がぴったりで、たわわに実った、真っ白な超特大のリンゴか、やや小振りのスイカを双つ並べてブラさげているかのようだった。そう表現すると、上向き加減の乳首が、果実の蔕のようにも見える。また臀部も乳房ほどではないが、外側に向かって迫り出していて、いかにも成熟した女性らしい曲線を描いている。
「…………」
年齢のため、いまだ持つことができずにいる、女の魅力を妬ましげに見ていたくるみは、服を脱いだ真菜美をいきなり縛り始める。
「あああ……ッ! イヤぁぁ……ッ! す……ッ、素直に服を脱いだのにぃ……ッ!」
思わず怨嗟の声を上げてしまう女教師に、女子高生が鬱陶しげに説明する。